難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者への嘱託殺人罪で起訴された2人の医師らが、うち1人の父を殺害したとして逮捕され、19日で1週間になる。京都府警は医師らの認否を明らかにしていない。事件があったとされる10年前、何があったのか。父の死は謎に包まれたままだ。
「嘱託殺人事件の捜査で(容疑者が)浮上した。古い事件なので、慎重に捜査を進めている」
12日午後10時過ぎ。京都府警捜査1課の幹部は報道陣の取材に、医師の大久保愉一(よしかず)容疑者(43)と山本直樹容疑者(43)、山本容疑者の母・淳子容疑者(76)を殺人容疑で逮捕したと発表した。逮捕容疑は2011年3月5日、東京都内で何らかの方法により、山本容疑者の父(当時77)を殺害したというものだ。
捜査関係者によると、父はこの日午前、長期入院していた長野県の精神科の病院を退院した。同じ日に、淳子容疑者の名前で東京都中央区役所に出された死亡届には、同日午後1時50分ごろ、江戸川区のアパートで死亡したと書かれ、死亡診断書には心臓や血管の異常で急死したと記載されていた。
だが、府警が、長野県の病院の主治医に退院当時の父の病状を聴くと、容体は安定していたと証言。死亡場所とされるアパートの部屋は、死亡5日前に山本容疑者の名前で短期契約されていたことが分かった。死亡診断書の医師の欄には、山本容疑者らの知人医師の名前や、実在しない診療所名が記されていたという。
また、嘱託殺人事件で押収した山本、大久保両容疑者のパソコンの通信記録を解析した結果、両容疑者が父の死の約1カ月前から、火葬や死亡診断書の作成などをめぐり、メールを交わしていた形跡を確認。山本容疑者と淳子容疑者の間では「(父は)周囲を不幸にする」などとつづったメールも見つかったという。
府警は、得られた状況証拠などを踏まえ、3容疑者が転院を申し出て父を病院から連れ出し、病死を装って殺害した可能性があるとみて、調べている。
見立てに残る謎
一方、こうした府警の見立てに対し、明らかにされていない謎が残る。
まず、事件当日の3容疑者と…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル